Archive | 10月 2015

松本CINEMAセレクトによる「MOOSIC LAB 2015」各賞発表

松本CINEMAセレクトは、昨年に引き続き、今年も「MOOSIC LAB」の審査に参加させていただきました。以下が、松本CINEMAセレクトによる各賞と、総評です。

◉グランプリ=いいにおいのする映画

◉準グランプリ=『劇場版 復讐のドミノマスク

◉特別賞=『ねもしすたぁ

◉ベストミュージシャン賞=細身のシャイボーイ(『劇場版 復讐のドミノマスク』)

◉ミュージシャン賞=ベッド・イン(『101回目のベッド・イン』)

◉Vampillia(『いいにおいのする映画』)

◉最優秀女優賞=金子理江(『いいにおいのする映画』)

◉女優賞=まお[せのしすたぁ](ねもしすたぁ)、サイボーグかおり(『ライブハウス レクイエム』)

◉最優秀男優賞=福田洋(『劇場版 復讐のドミノマスク』)

◉男優賞=吉村界人(『いいにおいのする映画』)、Vampilliaの皆さん(『いいにおいのする映画』)

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「MOOSIC LAB 2014」で結果的に全国の審査員のなかでもっとも厳しい評価をすることになってしまったわたしたち松本CINEMAセレクトだが、そのことはわたしたちにとってもショックな出来事だった。わたしたちは、「映画と音楽のコラボレーションによる実験室」として「MOOSIC LAB」をとらえ、「MOOSIC LAB」らしさという点から評価を行ったのだが、それが「原理主義」的な硬直した見方にはなっていなかったか、との反省から、今年はあらたに若いスタッフを1名加え、4名(男女2名ずつ)で審査を行った。

昨年ほどではないものの、映画と音楽がガチで勝負したり、「映画×音楽」という縛りのなかで真面目に遊んでいる、と強く思わせてくれる作品はあまりなかったが、良い意味で「MOOSIC LAB」らしい作品(『いいにおいのする映画』)と良い意味で「MOOSIC LAB」らしくない(「MOOSIC LAB」をはみ出た)作品(『劇場版 復讐のドミノマスク』)に出会えたのは、わたしたちにとって喜びだった。

グランプリに選出した『いいにおいのする映画』は、もっとも真面目に「MOOSIC LAB(映画と音楽のコラボレーションによる実験室)」というお題に取り組み、かつもっとも高い完成度の作品だった。脚本も担当した監督の、Vampillia の音楽やバンドのメンバー構成を見事に物語世界に組み込み、主演の若い俳優たち(吉村界人、金子理恵)をもその世界に違和感なく溶けこませる技量には感心した。少女によって実現される光(色)と影と音のコラボレーションは嫌みなく可愛らしく、また、それが Vampillia の妖しさと同居することで、この作品独自の物語世界が構築されている。Vampillia の音楽の魅力を十分に伝えている点でも見事に「MOOSIC LAB」の要件を満たした優等生な作品である。

準グランプリに選出した『劇場版 復讐のドミノマスク』は、わたしたちをもっとも楽しませてくれた作品である。「MOOSIC LAB」らしさ、乱暴に言い換えるなら、「今どき」な映画と音楽のコラボレーションではないものの、ドラマと音楽の古典的な結びつきは、文句なく観客に幸福感を味あわせてくれる。特に、それ単体としても秀逸な主題歌が、終盤のドミノマスクと暗黒魔王の対決場面でそれが登場人物たちによって口ずさまれるとき、ドラマと音楽のコラボレーションは最高潮に達する。この作品の魅力が、本業はプロレスラーの福田洋(ドミノマスク役)に負うところが大きいのは間違いないが、真面目でバカバカしいこの物語世界を実現する上で細身のシャイボーイの歌が欠かせないことも言うまでもないだろう。個性的な脇役たちもいかがわしく愛らしい。

審査員特別賞に選出した『ねもしすたぁ』には、地味なローカルアイドルと東京の小さな劇団という「今どき」な組み合わせ(お題)を高揚感のある物語として消化させる構成力に感心させられた。脚本も担当した監督によるまさに「あて書き」の成果なのか、せのしすたぁのまおをはじめ、登場する全員がそれぞれの持ち味を出しており、ドタバタ騒がしいが嫌味のない愛すべき作品である。

以下、主要な賞には絡まなかった作品についても一言二言。

ライブハウス レクイエム』は、器用で手慣れた演出により、「MOOSIC LAB」という枠外であれば、賞に絡んでもおかしくないようなよく出来た作品だが、フィーチャーされるべきマチーデフ&サイボーグかおりの音楽が魅力的なだけに十分に活かされていないのが残念。ボイパなら「喋れる」という設定ももっと物語に組み込まれてもよかったのではないか。ただ、(おそらくは三条市というロケ地から産まれたであろう)「地方のインディーの痛さ・切なさ」というテーマは、「MOOSIC LAB」を超えて、刺さる人には刺さるだろう。

101回目のベッド・イン』は、トレンディ・ドラマを知る世代と知らない世代とで評価が大きく分かれそうな作品だが、ベッド・インのキャラの突出ぶりには誰もが圧倒されざるをえない。観客がベッド・インのノリについていけない状況は作品内で先取りされており、ベッド・インの空回りぶりが生み出すむなしさ、さびしさには奇妙に惹かれるものの、ミュージシャンとしてのベッド・インの魅力が十分に描ききれていないのは残念だった。

マイカット』は、松本でロケーション撮影をしたということを抜きにしても、美しい映像による端正な作品。強い印象を残しはしないものの、出演する女の子たちはみな可愛らしく、音楽も単体として可愛らしいが、それが物語世界と調和も化学反応もしていないのが残念だった。

劇場版 しろぜめっ!』は、いろいろな人、いろいろな町が見られ、閉じがちな「MOOSIC LAB」に風を吹き込むような自由な開かれ方が魅力の作品であり、監督の編集技術の高さにも感心させられる作品だが、すでにスガダイローを知っている人と知らない人では見方が別れるだろう。時折はさまれる短いライブの映像からもスガダイローの音楽の魅力は伝わっては来るが、この作品は全体として人>音楽なため、まだ彼を知らない人にその音楽の魅力を伝えるには不十分ではないか。

MUSIC MACHINE』は、「アート」がやりたかったのか『監督失格』がやりたかったのか、それともその両方がやりたかったのか……。まとまりのなさを「実験」と呼ぶなら、「実験」にはなっているのかもしれないが、今年の「MOOSIC LAB」の作品の中で突出して閉じた作品だった。

あらたに若いスタッフを1名加えて挑んだ今年の審査だったが、硬直した「原理主義」的な評価から逃れることが出来たかどうかは心許ない。けれどもやはり、わたしたちは依然として「MOOSIC LAB」に「新たな出会い」を期待している。音楽好きにはまだ見ぬ映画の魅力との、映画好きにはまだ聴かぬ音楽の魅力との出会いを提供してくれる場として「MOOSIC LAB」が機能してくれることを。

特定非営利活動(NPO)法人コミュニティシネマ
松本CINEMAセレクト スタッフ一同(宮嵜・後町・宮本・飯岡)

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